万浪るりと長男ヨシの親子留学体験記

こちらは私と長男ヨシの子連れ留学の記録、旧サイトより掲載の人気コーナーです。時はなんと20年前(!)、Emailも普及する前のこと。この頃大学出願はすべて文書で郵送でした。更に特記すべきは、この記録を書いた頃、私は「公園ママ」だったこと。出願や出発前も、現地入り後も留学サポートが欲しかったのに、利用できず一人で取り組むしかなかったという経験が、留学コンサルタントとしての私の原点にあります。

 

今回追記の最終章以外は、公園ママ時代の私が書いたもの。あえて手を加えずそのまま掲載しています。

  • 出願
  • ビザを取得
  • ホノルルへ出発、新居探し
  • 初期費用概算
  • プリスクール生活
  • 当時を振り返って

出願

ベビーカーを押して公園へ通う日々。帰り道に本屋さんに立ち寄り、留学情報を探す。『成功する留学』や『留学ジャーナル』を眺めてはみるが、費用の記事、現役留学生へのインタビュー、どれも私にはあまり参考にならない。子連れだと、費用も生活も、まったく違うのだ(今はプチ留学が流行っているので、情報も多いかも!)。とりあえず環境がいいこと、費用が高すぎないことを条件に 州立のハワイ大学とワシントン大学、カナダの州立大学をいくつか選び情報を集める。インターネット・Eメールなんてものとは違う世界で生きてた私には、「郵送」が唯一の通信手段。「英文レターの書き方」という本を片手に、資料請求のレターを書く。

 

夢はアメリカ本土へと広がる一方、私の目は次第にハワイへ向きはじめる。主人が「ハワイがいいよ」とのんきなことを言っていたこと。子供を治安や医療の心配がないところで育てたかったこと。そして費用が高すぎないこと。ハワイはアメリカ東海岸の半分以下、西海岸の約半分。この3つが留学先選びの決め手だった。

 

ここで子連れ留学を目指す方へ最初のアドバイスがある。安心して子供を預けられる場所があることが大前提の子連れ留学生活。出願、 準備と大きく足を踏み出す前に、必ず現地を訪ねてみて、託児所関係の情報を得ることをお勧めする。ちなみに、私は実際に留学をスタートする1年前、ハワイ大学のキャンパス内にあるチルドレンズ・センターを訪問。短くて半年、長ければ1年以上というウェイティング・リストに登録するための書類を手にしていた。いい託児所ほど、待ち行列も長いものだ。

 

やっとの思いで手紙を1通送って数週間後、ハワイ大学から学校案内と出願書類が届く。必要な書類のリストを見て唖然とする。

*高校、短大それぞれの卒業証明書と成績表

(もちろんすべて英文)

*短大時代に履修した科目のコース案内

(編入単位の認定のため)

*アプリケーションフォーム(タイプで記入)

*なにを勉強したいかのエッセイ

*TOEFL スコア

*健康診断書(レントゲン結果と予防注射の証明を含む)

*銀行残高証明書

 

英文での証明がとれないものには証明付きの英訳を添えろとのただし書き付き。怖じ気づいた私は、思わず「留学手続き代行業」にすがろうとする。カウンセリングに飛び込んだ、新橋の留学エージェントのオフィスで、忘れもしないお言葉を頂く。「1人でも留学生活は大変なのに子連れでは無理。出願のお手伝いをして(手続き代行費用20万円なーり)、仮に合格したとしてもビザを取得するのがまた難しい。お受けしない方があなたのため」。なるほどね、これは良心的な業者だったのかもしれない。ここであきらめなかったのが、我ながらすごい。覚悟を決めて、毎日子供を寝かしつけたあと、書類作成に励む。

 

一番面倒だったのが、健康診断。留学するとなると、何かと必要になるのが予防接種の記録なのだ。特に子供の場合は、入学時に接種記録提出を要求されることが多い。ヨシのはまだいいとして、私の母子手帳なんて、30年も前のもの。幸い北海道の母の手元にあったが、今更これが必要になるとは思わなかった。

 

そして、最初の合格通知を受け取ったのが 1996年の夏。この頃、まだ1歳前だった息子と主人と共にハワイを旅行しハワイ大学・チルドレンズセンターを訪問する。そしてウェイティングリストに登録を済ませ、あとはビザを取るのみとなるわけだが、そう簡単にはいかない。自己手配はやっぱり、大変。

 

ビザを取得

さて、噂の大問題は『ビザ』。今度は学生ビザ(F1ビザ)出願のために必要な書類をまた集めなきゃいけない。必要書類は、情報電話番号や情報サイトなどが用意されているのでそちらを参照してください(2003年8月より、ビザ申請方法が大幅に変わっています。確認してくださいね)。さて、ここでも問題の「エッセイ」が要求される。提出したいのはやまやまだけど、間違いだらけなはずの英文をチェックしてくれるネイティブ・イングリッシュ・スピーカーが身近にいない…。学生なら一人や二人、お願いできる先生がいるだろう。私は公園ママなのだ。ええい、めんどうくさいから エッセイなんかナシでいっちゃえ~!と、ノリで出願書類を郵送してしまう。

 

案の定、一度目の、郵送での申請は却下。2度目、仕方がないので、虎ノ門・アメリカ大使館での出頭申請を試みる。サービス業出身、愛想や受け答えにはわりと訓練を積んでいる。アメリカ人男性係員から英語で質問されたことは、主人は留学に関してどう思っているのか、学校にいく間子供はどうするのか、の2つだった。主人は理解してくれていること、子供はキャンパス内にあるプレスクールに通う旨必死に伝えた結果、1997年12月より1年間有効のお情けビザが発行される。

 

ビザ申請の際、何の書類を提出したら良いのか?それは「留学期間中、経済的な問題がないこと、日本の家族や仕事とのしがらみ(繋がり)があること、留学終了後、日本に帰国して留学で学んだことを生かして働くこと」、その意思や経済力を証明できると思われる書類全て、提出すべきである。審査官も人間だから、書類からその必死な思いが伝われば、ビザは発行される。

 

それにしても、現地の入国審査官、大使館職員、みんな顔が怖いんだぁ~。自分が旅行者や航空会社職員だった時は全く見なかった入国審査の一面。留学生にはみんな冷たいものなんだなぁ。

 

そして、それから家族の説得。これは、家族それぞれの問題。ポイントは、真摯に話し合うことのみ、ですね。

 

ホノルルへ出発、新居探し

まずは、新居探しである。初めは車がなかったため バスで学校に通うことにする。そのため、バス停に近い1ベッドルームコンドミニアムで セキュリティがいいところという条件に絞る。Honolulu Advertiser(日曜版に最新情報がのる)のレンタル物件広告から数件選び、連絡のとれたものから物件を見に行く。幸い2件目に見た コンドミニアム(1415 Victoria St.)が条件にぴったりあてはまり、その上家具、生活用品までほとんどのものが揃っている。ランド・レディ(大家さん)もばりばりのキャリアウーマン風でなんとなく安心できそう。話はとんとんと進み、駐車場付きの1ベッドを家賃750ドルで借りることになった。こうして家探しはすんなり終わり、善は急げと次の日には持参したスーツケース2個とベビーカー、ゴルフバックなどを持ち込み、入居。主人がいるうちにと生活物資の買い込みもすませる。どれだけ少ないモノでハワイ生活をスタートしたか、またどれだけ大量のものがそれから蓄積されていったか。どちらも驚きだった。

 

そうこうしているうちに、もう主人が日本に帰る日。そして車のある生活も、ここで終わり。空港まで見送りに行き、主人がゲートの向こうに見えなくなったとき、本当にふたりぼっちのハワイ生活がスタートした。太陽の光、南国の香り、そして美しい熱帯植物に囲まれた私。1人の知り合いもいないハワイで、1歳11ヶ月のヨシと2人にきりなった日の自分の姿を一生忘れることはないだろう。

 

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初期費用概算

●航空券 大人2人で約2300ドル。ヨシ2歳前で、最後の無料フライト

●家が見つかるまでのホテル代 アイランド・コロニー、1泊100ドル弱。1週間ほどの滞在で700ドル

●家を借りるデポジットと始めの家賃 1500ドル(家賃2ヶ月分)

●レンタカー 500ドル

●私とヨシの長期用海外旅行障害保険1学期分(4ヶ月)で約300ドル

●ヨシのプリスクール学費(1学期分) 約2200ドル

●私の学費(1学期分) 約4500ドル

●テレビ&ビデオ 約300ドル。借りた部屋にほとんどのものが揃っていたため、その他大きなものはほとんど買わずにすんだのはラッキーだった。

 

そして、これ以後留学終了まで、毎月家賃750ドル、学期ごとにプリスクール学費の2200ドル(幼稚園に入るまでの3年間)、私の学費1800ドルに、教科書代300ドル前後、海外旅行傷害保険300ドル、そしてのちに購入した車の維持費、保険料(半年で約500ドル)を否応なく支払うことになる。

 

「私の学費」について。留学生(F-1ビザ保持者)には、アメリカ国籍保持者とは違う学費が定められている(ひどすぎる)。それが当時は約4500ドルだった(今はもう少し高い)。そしてこれは、平均「B」以上の成績を維持すれば、アメリカ人と同じ額の約1800ドルになる。私の場合、初めは4500ドルを払い込んだが、短大での成績が「平均B以上」だったということで、約2800ドルが払い戻された。それ以来、アメリカ人料金をキープしているが、コンピューター専攻になってから成績があまりよくないので、つらい。「D」なんかとってしまうと、とてもまずいのだ。

 

*こちらは留学開始の1997年当時の費用です。特に家賃や授業料は大きく値上がりしています。

 

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プリスクール生活

ヨシは、1歳11ヶ月から約3年間をハワイ大学マノア校チルドレンズ・センターで過ごした。このプリスクールは、ハワイ大学マノア・キャンパスの一角、ユニバーシティ・アヴェニュ-とドール・ストリートの交差点をちょっと下った所にある。2歳から5歳まで、全部で90名ほどの生徒たちの父兄のほとんどは、学生や職員などのハワイ大学関係者。保育時間は、3歳児から5歳児までは午前8時から午後5時。2歳児は午前9時から4時までになる。費用は昼食、スナック、飲み物などを含めて1学期(約4ヶ月)1800ドルちょっと。これは収入やファミリーサイズによって違うらしいが、ホノルル市内の他のプレスクールに比べるとちょっと安めと言える。

 

こちらのプリスクールには「大学併設」ならではの、数々の特長がある。まず1つは先生達の学歴の高さだ。2歳児のクラスでヨシの担任だったジョージアは、博士号保持者。2001年には、Early Childhood Education(早期教育)の、ハワイでの第一人者として州の表彰を受けた。そして、ヨシが2年間お世話になった中国人の先生ジュリーは大学院卒である。そんな高学歴者がどうして「プリスクール」の先生なのか疑問に思うところだが、答えは1つ。みんなかわいい子供たちを心から愛しているのだ。もう1つは、子供達の民族的なバックグランドの多様性。もともとハワイといえばアジア系、白人、国人、ミックスといったさまざまな人々が集まる社会である。このプリスクールも例外ではなく、はっぱ日本人、ローカルハワイアン、韓国人、中国人それにインド人、フランス人…とにかくさまざまな文化と言語が飛び交い、子供達はごく自然に世界の文化や言葉に触れることができるのだ。

 

そして、まだある。アカデミックな環境のせいか、子供たちへの「期待度」が非常に高い…英語で言えば「high expectation」という感じ。おかげさまで言葉の発達に時間がかかったヨシは「スクリーニング」を受けろだの、カウンセリングを受けろだの、ずいぶん心配されたものである。すっかり落ち着いてお兄ちゃんになったヨシを連れて、いつかまたここへ帰ったら、ええっ、あのヨシなの?とみんなびっくりするに違いない。

 

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当時を振り返って

ハワイ留学中、お友達皆のようにパパ・ママの4つの眼で見守られるのでなく、ヨシを見る眼はいつも私の2つだけ。

それがとても可哀そうだったし、実際いつも、ハワイでのヨシの写真は寂しそうに見える。

 

帰国後、ヨシを見守る眼が4つになり、ヨシは安心し、落ち着いたように見えた。

日本の暮らしの安心感を痛感したのか

「僕を海外で学校に入れないでぇ~」

と言っていた。(笑)

 

高校に入った頃からか、ハワイで育ったこと、英語ができることは

自分には大きなプラスだと感じ始めたようだった。

 

大学生になって、ハワイで育ったことは自分の誇りであり、

いつの間にかちょっとした「自慢」になっているではないかと感じるようになった。

 

家族がバラバラの時間。

莫大な出費。

子供と過ごせない時間。

親子留学はデメリットも大きいけれど、それを超えるメリットも残ります。

 

当時を振り返って、大きく影響が残ったかなと思うことを挙げます。

 

ヨシ(1歳11か月~6歳10か月)

  • ・英語を聞く耳、話す音と英語のセンスを身につけた(9~10歳までしか得られない言語能力)
  • ・ハワイの大自然を朝から晩まで駆け回って過ごし、ハードなサッカーと勉強の両立生活を可能にする基礎体力をつけた
  • ・周囲の人々の人種・カルチャーや環境が変わっても自然に受け入れ切り替わる、言語・環境切り替えスイッチを得た。成長過程のどの年齢でも、自分自身はいつものまま全く違う言語環境に入っていける準備ができていると感じる

 

私(30歳~35歳)

  • ・ハワイ大学卒の学歴
    (ランキング120位前後の州立大学でトップスクールではないが、どこへ行っても「ハワイ大卒」には興味を持ってもらえる。学歴も大事だけれど、もっと大事なのは「自分自身」の現代社会、まず興味を持ってもらえる学歴としては十分)
  • ・キャリアに繋がる技術を得た。(コンピューターサイエンス専攻。技術職に就く程ではなくても、IT分野の基礎知識は仕事全般に役立っている)
  • ・大人になってからの留学は、言語的には多くを得ていないかもしれないが、私が得たものは「人種・育ちの違う人々の理解、幅広い経験を経て得た、異文化環境下でも状況を察知する感覚」。漠然としたものかもしれないが、留学生がおかれる環境・状況を把握するのに非常に役立っている。

 

夫(お留守番)

  • ・ゴルフスコア20アップ
  • ・息子の成長への楽しみ
    (基本子育てはしない、企業戦士。英語力や国際性の必要を日々感じるからこそ、息子の語学力や国際感覚を評価している様子)
   

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